身近なようで意外と知らない油のはなし。

「トランス脂肪酸」「飽和脂肪酸」「オメガ3」などの言葉を、一度は聞いたことがあると思います。

しかしこれらは一体何なのでしょう?
身体にどのような影響を与えるのでしょうか?

今回の食卓コラムでは、油の基本的な構造を化学的に学んでいくことで、それぞれの油に対するなんとなくのイメージを、確かな知識にかえていく手助けをしていきます。

2.飽和脂肪酸?オメガ3?トランス脂肪酸?油の違い、きちんと知ってる?

私たちの身体に不可欠な存在である「あぶら」。

日本語では、常温で液体のものを「油」常温で固体ものを「脂」と呼び、これらの総称を「油脂」と呼びます。

では「油脂」とは何ものなのでしょうか。
答えはとても簡単。油脂とは、1つのグリセリンと3つの脂肪酸から構成されてる物質の総称です。

「トランス脂肪酸」「飽和脂肪酸」「オメガ3」などの油脂の名称はこの3つの脂肪酸の構造状の違いにより名づけられ、その性質の違いも構造状の違いによって決定しています。

脂肪酸の構造状の違いとは?

脂肪酸の構造状の違いは2つのみです。

1:連なっている炭素の長さがどのくらいか
2:連なっている炭素の中に二重結合があるかどうか

まず、油脂の特徴を理解するためには構造の中に「二重結合があるか」がとても重要です。

飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸、オメガ3、オメガ6、トランス脂肪酸、油脂の融点などもこの二重結合があるのか、あるとすれば何個あるのか、どこにあるのか、によって決まっています。

飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の違い

連なっている炭素の中に二重結合がない脂肪酸は「飽和脂肪酸」二重結合がある脂肪酸は「不飽和脂肪酸」と呼ばれます。

難しい名称なので何か大きな違いがあるように思われがちですが、構造だけを見るとただこれだけの違いなのです。

(★やや難しい内容ですが化学好きの方のために・・・二重結合がない脂肪酸は、構造状それ以上水素を付加することができない=飽和状態のため“飽和”脂肪酸、二重結合がある脂肪酸は二重結合部分に水素を付加することができる=飽和していない状態のため“不飽和”脂肪酸と呼ばれています。)

一般的に飽和脂肪酸は動物が作り出すことが多く不飽和脂肪酸は植物が作り出すことが多いです。

必ずというわけではないですが、不飽和脂肪酸のほうが健康に良いと言われています。

オメガ3とオメガ6とオメガ9の違い

連なっている炭素の中で、端から数えて3番目に二重結合があるすべての脂肪酸は「オメガ3脂肪酸」と呼ばれます。
同様に6番目に二重結合があるすべての脂肪酸は「オメガ6脂肪酸」、お察しの通り9番目に二重結合があるすべての脂肪酸を「オメガ9脂肪酸」と呼びます。

二重結合がどこにあるのか、という点で名前がついているのですべて不飽和脂肪酸です。(飽和脂肪酸は二重結合がない脂肪酸のことを指すため。)

こちらも一見難しそうに感じるオメガ3、オメガ6といった名称も、構造から紐解くと二重結合の位置によって名づけられたシンプルな名前ということが分かりますよね。

 

オメガ3系脂肪酸は端から数えて3番目に二重結合があることを共通点に、連なっている炭素の長さと二重結合の合計数の違いによっていくつか種類があります。
例えば、エイコサペンタエン酸(EPA)(炭素が20個、二重結合が5個)や、ドコサヘキサエン酸(DHA)(炭素が22個、二重結合が6個)などは有名なオメガ3系脂肪酸の名称です。

同様にオメガ6系脂肪酸ではリノール酸がよく知られていますが、他にも8種類存在しています。

オメガ9系脂肪酸ではオレイン酸、エルカ酸(前回の食卓コラム「サラダ油は何からできてる?食用植物性油を徹底解剖!」で登場しましたね!) が有名です。

以下にそれぞれの脂肪酸を含む油脂をあげました。

飽和脂肪酸は一般的に動物から作られることが多いですが、ココナッツオイルも飽和脂肪酸です。
なので飽和脂肪酸は動物性=身体に悪い、不飽和脂肪酸は植物性=身体に良い、というイメージには例外もあるということです。

 

■不飽和脂肪酸
ーオメガ3脂肪酸・・・エゴマオイル、アマニオイル、魚の油(ニシン、サバ、イワシなど)、菜種油(キャノーラ油)
ーオメガ6脂肪酸・・・ごま油、大豆油、ヒマワリ油、紅花油
ーオメガ9脂肪酸・・・オリーブオイル、アーモンドオイルなど

■飽和脂肪酸・・・バター、ラード、牛や豚の脂身、マーガリン、ココナッツオイル

では、トランス脂肪酸とは?

シス脂肪酸と呼ばれる自然界に一般的に存在する不飽和脂肪酸に、人工的に水素を付加する処理を行うことで偶然できてしまう脂肪酸のことを「トランス脂肪酸」と呼びます。

シスはラテン語で「同じ」という意味を持つのに対し、トランスは「反対」といった意味を持ちます。(シスとトランスは化学の構造式などではよく出てくる単語です。)

トランス脂肪酸は自然界にも存在していてそれ自体が悪いものではなく、大量に摂取してしまうことが問題となります。
トランス脂肪酸は周りのトランス脂肪酸と積み重なるような構造をとっているため体内で互いに重なり合い健康に害を与えると言われています。

なぜ自然界のシス脂肪酸に人工的に水素を付加する必要があるのか?

食品を作る際、二重結合をもつシス脂肪酸に人工的な処理で水素を付加すると、一部の二重結合が単結合(二重ではない普通の結合)に変化します。これによって油脂の融点(油脂が溶ける温度)が上がるため、マーガリンのように室温で固体の油脂を作り出すことができます。

融点が高い油は常温で固体のため食品から流れ出てしまうことがなく、使用用途が広がるためこのような処理を油脂に施す技術がよく使われるのです。

おまけ

余談ですが、同じ油脂でも、オリーブオイルやサラダ油はなぜ常温で液体なのにバターやココナッツオイルは常温で固体なんだろう?と疑問を持ったことはありませんか?

ここでも二重結合があるかないか、という点に注目するとその謎を解くことができます。

二重結合をもった油脂(不飽和脂肪酸)は融点が低く、二重結合をもたない油脂(飽和脂肪酸)は融点が高いという特徴があります。

つまり不飽和脂肪酸であるオリーブオイルは融点が低い(より低い温度で油脂が固体から液体になる)=常温で液体になりやすい、一方で、不飽和脂肪酸であるバターやココナッツオイルは融点が高い(個体から液体になるのにより高い温度が必要)=常温では固体のまま、という現象が起こるのです。

最後に

今回のコラムでは油脂の構造や融点など、化学的な構造について学びました。
難しい内容でしたが、これらの特徴が揚げ物に向いている油かそうでない油かなどを判断するヒントになってきます。

それぞれの油がどのような違いを持っているのかを認識し、「健康に良い/悪い」という流行りの言葉に惑わさせない知識を持ち、摂取する油を選択していきたいですね。